INTERVIEW 各社で働く人たち

三峰川電力株式会社 W.A 事業統括本部長/常務執行役員 2013年 キャリア入社 前職:丸紅機械系グループ会社

水力発電でクリーンエネルギーを次世代へ。
60年超の実績で新たな「常識」を作りにいく。

建設業界から再生可能エネルギーの世界へ

ファーストキャリアは建設業界で、丸紅グループの安定性と専門性の高さに惹かれて丸紅機械系グループ会社に入社しました。空調・給排水衛生設備や電気設備工事、産業向けのコージェネレーション導入※1に10年ほど携わり、その中で興味のあった電力業界でキャリアを積むため、丸紅の電力本部の新規事業へ参画しました。新規事業の立ち上げや新技術を取り扱ったこと、エネルギー業界における幅広い知見やチャレンジングな姿勢に日々刺激を受けていました。

当時、主に取り組んでいたのは、産業用の大型燃料電池の新規ビジネスです。米国企業が持つ優れた新エネルギー技術を日本に広めるため、日本法人を立ち上げてそこに出向しました。会社設立やファイナンスについて実践的に学べたことはもちろん、プラントの輸入・販売・維持管理などプロジェクトマネジメントの経験が現在にも活きています。

その後、2008年に三峰川電力へ出向し、電力自由化が本格化した2013年に正式入社しました。再生可能エネルギーの重要な選択肢の一つとして、水力発電が再び脚光を浴びることになった時期で、地域の水資源を活用し、地域復興にも貢献できることに大きな可能性を感じましたし、60年にも及ぶ豊富な水力発電事業の実績を持つ三峰川電力なら、長期的な価値を社会へ提供できると思ったのです。

※1:コージェネレーション……電力と熱を同時に生産するシステムのことを指す。この技術は、一般的に「熱電併給」とも呼ばれ、効率的なエネルギー利用を実現するために設計されている。

難案件を成功に導く、三峰川電力の技術力と交渉力

出向・入社後は水力発電所の開発から運用までを一貫して手掛けるプロジェクトマネージャーとして、多岐にわたる業務を担当しています。発電所の候補地を探すところから始まり、現地の調査や法的手続き、設計、資金調達、建設・運用と段階を踏んで進めていきます。その中で大切にしているのは、初期段階から現地に足を運び、地元の方々とコミュニケーションを図ることで地元の仲間入りをさせていただくことです。地域のことを深く知り、ここで水力発電を開発することが地域の未来にどのようにつながるか、しっかりと向き合うように心がけています。

デベロッパーとしてプロジェクトの全工程に携われることは、大きなやりがいにつながります。投資資金を調達し、建設業者への発注や土地の買収などが済んでから着工。地元の建設会社にも協力してもらいながら最終的に発電所ができあがると、そこから100年を超える長期的な運用が始まります。地域と手を取り合いながら共に進めていくので、自分にとって新たな「故郷」ができるような感覚ですね。

三峰川電力は水力発電における新規開発のリーディングカンパニーとして、現在は全国33か所の水力発電所を運営しています。しかし、そこまでの道のりは平坦ではありませんでした。戦後、電力需要の急増で火力発電が主流となり、水力発電の技術者が減少。幸いにも、三峰川電力には60年以上の経験値を持つ社員がいたおかげで技術は存続しましたが、課題はそれだけではありません。水力発電の最大の課題は、多岐にわたる許認可取得、特に複雑な水利権※2取得プロセスです。水力発電の場合、水資源を使用する許諾確認が非常に難しいのです。複雑な法規制を頭に入れながら他の産業や農業の関係者、さらには地域住民とも協議を進める必要があります。三峰川電力が、他の開発希望者も二の足を踏むような難しい開発案件を数多く成功に導いてきたのは、長年培ってきた技術力と粘り強い忍耐力があったからこそです。

※2:水利権……特定の目的のために流水を排他的・継続的に使用する権利。水力発電以外にも、かんがい、水道など、さまざまな目的で使用されている。水利権の取得には河川管理者の許可が必要。

今まで携わってきた発電所はどれも地域密着で親しみを持っていますが、特に印象深いのは日本初の公営水力発電所を対象にしたPFI※3コンセッション事業です。2019年に鳥取県営の水力発電所4サイトを対象に事業者が公募され、その入札に私がプロジェクトマネージャーとして参加しました。民間企業が公営水力発電のリプレイス開発及びコンセッションを進める前例のないプロジェクトで、誰も正解が分からないながらも、三峰川電力の先人たちの知見を頼りに取り組み、無事に落札できました。入札金額だけにフォーカスするのではなく、地元の方々と関係を築けたことが成功の要因だったと思います。

※3:PFI……公共施設の設計・建設・維持管理・運営などに民間の資金や経営能力、技術を活用する手法で、水力発電にも適用できる。地方公共団体が発注者となり、民間のSPC(特定目的会社)が業務を遂行する。

水力発電の「常識」を自ら作りにいく

2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、世界中から再生可能エネルギーに注目が集まっていますが、その中で水力発電が担う役割は大きいと思います。かつては日本国内での主流電源だったこともあり、水力発電のポテンシャルはまだまだあります。私たちが業界をリードしながら、水力発電における新たな「常識」を作っていきたいと考えています。そして、三峰川電力のブランドを、誰もが認知する存在へと成長させていきたいですね。
さらなる事業成長を目指す上で、丸紅グループのシナジーはお客さまとの関係づくりに大きく寄与します。例えば、総合商社としての強みを生かし、丸紅の電力本部以外の部署に関係地域の農作物などの輸出品を提案することや、発電所でつくった電気をグループ会社(丸紅新電力)の協力を得て地産地消で地元に売買するなど、新たなつながりが生まれることもあります。

一人ひとりの業務内容は、発電所をつくり上げる「開発」と発電所を安定的に維持していく「運用」に分かれますが、共通しているのは国産のクリーンエネルギーを未来に向かって生み出そうとする実直な思いです。将来の子どもや孫にクリーンな国産エネルギーのバトンをつなげていくため、当社ではゼネコンからアパレルの販売員まで、さまざまなキャリアを持つメンバーが信念をもって仕事に取り組んでいます。

仕事のオンとオフはしっかり分かれており、社内は20代、30代の若いメンバーの割合も高く、プライベートでもみんな仲が良いです。わからないことがあれば聞きやすい雰囲気ですし、あらゆる技術やノウハウを習得して「オールマイティー人材」として成長することができます。また、新規事業の創出や起業に興味を持っている方にも最適な環境で、時には数億円にも及ぶ資金を調達して水力発電の大規模プロジェクトを一から立ち上げられます。多業界で活躍してきたメンバーの知見も借りながら、この業界にイノベーションを起こして水力発電をさらに普及させていきたいですね。

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